はたらいてみっかやあ

「はたらいてみっかやあ」 

はたらいてみっかやあ
ちょっくらはたらいてみっかやあ
ちょっくらでいいら さいしょは

はたらくのはそんなにむずかしいことではないよ
やってみたらわかる

うまくいかなくってもいいよ
うまくいかなかったらつづけなければいいよ
またべつのことをしよう

やってるうちにうまくなる
ごはんもおいしくなる
からだのちょうしもよくなる
じぶんにちからがみなぎってくるのがわかる

でもむりしたらいかんよ
できることをぼちぼちやったらいいよ

はたらいてみっかやあ

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わたしは今、生活に困った方から相談を受けて支援をおこなう、沼津市自立相談支援センターというところで働いています。「働くことについての明るい話題」を提供してほしいという話を受け、上司である大塚さんに話を伺うことにしました。

大塚さんが、うつを患ったのは今から5年前の2015年。

メーカーの会社員でシステムの生産管理を担っていました。朝7時半に出勤し、深夜2時に退社する生活。一日の労働時間は18時間を超えていました。2015年5月、突然耳の聞こえが悪くなり、次第に、寝ることと食べることができなくなっていきました。上司の指示で病院の検査を受け、うつと診断されました。その後も何とか勤務を続けたが、悪くなるばかり。8月はほとんど出勤できなくなり、夏なのに冬用布団を頭まで被って寝ていたそうです。ようやく休職を決めました。

休職し2ヵ月程たった頃、少し動こうかなという気になり、喫茶店で開かれたFacebookの使い方を学ぶ講座に出かけました。そこで知り合った人に、「面白いことをしている人たちがいるから」と紹介され、誘われるままにほかの活動にも顔を出していきました。

その活動のひとつが、困窮者世帯の子どもへの学習支援でした。最初はリハビリを兼ねて、外に出られる時だけ行っていましたが、大塚先生が来るのを楽しみに「来て来て!」と言ってくれる子がいたおかげで、毎回参加できるようになっていきました。

同じ学校の友達と会うのが辛い子どものために特別に、学習支援の場をつくってくれたと当時一緒に活動したAさんが教えてくれました。

当時の大塚さんは自信がなさそうで、自分をセーブしながら、少しずついろんな人に出会っていきました。大塚さんはこうして、会社の中では出会うことのない、地域に住む人たちと出会うようになり、少しずつ動けるようになっていきました。

人と出会ううちに、今の仕事ともっと違うことがやりたいと思いになり、2017年6月会社を退職。

どうせやるなら人の役に立つことをしたいと福祉の道を目指しました。その後、社会福祉士と精神保健福祉士を取得し、現在は、自立相談支援センターでセンター長として働いています。

大塚さんは、自分がやってあげるという姿勢ではなく、「そっかぁ」と相談者さんの話をただ聞きます。当時の大塚さんにも、きっとそういう人がいたからなんだろうなと思います。

「人は人と出会うことで変わっていく」

今年6月に身寄りがない状態で沼津に越してきて、困難を乗り越えてきたカップルの婚姻届にサインしている大塚さん

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「自転車に乗ろう」 

自転車に乗ろう
最初はすぐは乗れない
こけるのが当たり前
こけたらこけたらで痛い

どうしても走れんこともある
よくみたら、自転車が大きすぎたりする
そんなときは、自転車をかえよう
気づいたら、坂道を走ろうとしていたりする
そんなときは、平らなところを走ろう

ちょっとでも走れると嬉しいのが自転車
風が動くのが分かる
けしきが変わるのが分かる
走れると楽しくなる

うん、君は自転車に乗れるよ
うん、乗れる
僕も乗れたもん

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【筆者のご紹介】
津富宏(つとみ・ひろし)さん 2002年からNPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡を立ち上げ、若者や生活に困窮している方々の就労支援に取り組む。静岡県立大学教授。
吉田真友(よしだ・まゆ)さん 2020年6月よりNPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡に入職。沼津市自立相談支援センターで生活支援相談員として勤務。

今回は、NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡を率いる津富宏さんと同NPOで相談員として活躍中の吉田真友さんにご寄稿いただきました。津富さんらの活動は、静岡方式として有名ですが、地域の様々な経歴を持つボランティアがサポーターとして、伴走型で若者や生活困窮に悩む方々の就労支援に取り組んでいます。「どんな人でも働ける」。それが「静岡方式」の信念です。「働くことで人は変わる。仕事に人をつなげ、その人を変えていくのは、地域つまり人のつながりです」と津富さんは語ります。
今回の津富さん、吉田さんお二人の合作のエッセイは、冒頭の「はたらいてみっかやあ」と最後の「自転車に乗ろう」の二編の詩は、津富さんの作品。二編の詩をつなぐ活動の記録は、吉田さんの執筆です。

吉田さんの勤務する沼津市自立相談支援センター