国際的な障害者就労、ダイバーシティ就労の4類型

1.一般労働市場での就労(一般就労)

〇 企業等で、(「合理的配慮」や雇用率制度を除く)特段のサポートなしに働くもの。

2.支援(援助)付き雇用・就業(supported employment)

〇 一般労働市場での就業を実現ないし維持するための何らかのサポート(ジョブコーチ、所得補てん、税控除等)を伴う就労。

3.保護就労(雇用)(sheltered work (and employment))

〇 一般労働市場での就業が難しい方々に、保護的環境の下、リハビリテーション・プログラムと就労/就労関連活動を提供するもの。

4.デイアクティビティ・センター

〇 重度障害で、最低限の作業活動しか難しい方々に対し、日常生活上の支援、身体機能や生活能力の向上のために必要な援助、そして創作的活動・生産活動の機会の提供を行う「デイアクティビティ・センター」での簡易な就労。日本では、障害者総合支援法体系での生活介護施設が該当。
就労上の困難を抱える人々は障害者以外にも多くいます。ひきこもり・ニート、貧困母子世帯、刑余者、生活困窮な高齢者などなど。
「障害者」の概念を「就労上の困難を抱える者」と考えれば、一般労働市場での就労、支援(援助)付き雇用・就業、保護就労(雇用)、デイアクティビティ・センターからなるこの類型区分は、さまざま就労困難状況にある人々に共通して適用できるのではないでしょうか?

世界の障害者就労、ダイバーシティ就労の動向

世界の障害者就労、ダイバーシティ就労の動向を概略的に整理すると次のようになります。

第1に、雇用・就業上、何ができないか(ワーク・ディスアビリティ)から、何ができるか(ワーカビリティ)への政策転換が進行しています。
何ができるかの評価に基づき対象を明確にしたサポートが重視されるようになり、一般労働市場での就労促進、保護就労から支援付き雇用(サポーテッド・エンプロイメント)が急速に広がっています。すなわち、世界各国とも、多くの障害者をできるだけ、図表1のように、矢印の右側の就労形態に持っていこうとしています。

第2に、障害者だけでなく、多様な就労困難状況にある人々の受け入れを目指す動きが強まっています。
そして、貧困、障害、教育の欠如、家庭崩壊などで、社会的に孤立している人々を、社会の仲間として「包み込む」、ソーシャル・インクルージョン政策が広がっています。障害者だけでなく、「働きたいのに働けない多様な人々」を社会に、一般の労働の場に包含していこうという流れになっています。

すなわち、障害者をはじめとした多様な就労困難状況にある方々に関する就労類型を、世界の流れと関係づけると図表1のようになると思います。図表1では、横軸に一般就労化の程度をプロットし(右にいくほど、一般就労化の程度は強まります)、縦軸には障害者以外への対象者拡大程度をプロットしています(上にいくほど、障害者以外の人々に対象者が拡大します)。多くの国で、より右上に移行させようとしています。

これは、
(1)就労困難状況にある人々の生活の質(QOL:クオリティ・オブ・ライフ)を高め、
(2)多くの先進国に共通する労働力不足の解消に資し、
(3)社会保障費の増加抑制につながる、
まさに現在の先進国に求められる社会戦略です。

日本が率先して実行し、諸外国のモデル国となってほしいと願います。

図表1