成果①
WORK ! DIVERSITYネットワーク構想の現実化

総合報告書

1)ダイバーシティ就労支援地域プラットフォームは、多様な就労困難者に対する就労支援の質を上げることを目的として、地域レベルで、制度の縦割りを超えて継続性のある個別サービスを提供する「ダイバーシティ就労支援システム」を構築するための基盤となる、地域支援関係機関、就労事業所、就労困難者、自治体等の行政機関など、関係者が結集した連携のネットワークである。

この取り組みを可視化するためには、ダイバーシティ就労支援センター(仮称)の設立を旗印として、地域プラットフォーム構築ガイドラインの作成、自治体のダイバーシティ関連中堅幹部、主要な就労支援機関の施設長クラスを集めた勉強会の開催等により、就労困難者の就労に焦点をあてた地域の取組みを促進する必要がある。

「ネットワーク構築部会」では、①自治体の関係部署等が主導する場合(→事業担当の部課長、首長や議員等へのアプローチが有効。)、②民間の活動団体が主導する場合(→活動実績、地域的ネットワークに影響力がある団体へのアプローチが有効。)の2つに整理した。

図表1 態様別就労支援の広がりと支援内容の進化

態様別就労支援の広がりと支援内容の進化

2)地域プラットフォームに対し全国プラットフォームが実施する支援策として、ダイバーシティ就労支援スタッフ養成研修、職業訓練を活用した就労支援等が重要であるとの提言をまとめた。このうち、ダイバーシティ就労支援スタッフ養成研修については、ダイバーシティ就労支援に取り組む団体等の就労支援スタッフを育成するため、以下の研修プログラムからなる養成研修の実施を提言している。(2022年11月実施)

① 有効活用が可能な現行制度(主に就労訓練制度)の理解

② 態様別の特性理解

③ 支援の質を高めるためのアセスメントツールの活用、訓練プログラムの作成の演習

④ 企業での実地研修受け入れ方策の学習

成果②
支援の質を高めるためのアセスメント手法の整理

アセスメントツールを下に、就労支援の相談に携わる者やハローワークスタッフが、ダイバーシティな視点での就労に向けた対応能力を向上させるため、対応マニュアルを作成し、併せて「ダイバーシティ就労支援士(仮称)」等の民間資格の創設やその研修や資格認定試験の実施等も視野に入れ、検討を行う。

横断的な支援をするためには、各態様の個別の働きづらさや背景等を理解することも重要であり、例えば、「ひきこもり編」「難病編」など、態様ごとの短時間の動画を作成し、その態様の方の就労支援を初めて行う相談員、支援事業所、企業担当者向けの研修資料として活用することを検討すべきである。

成果③
横断的な就労支援に向けた現行制度の活用、改善の提案

① 求職者支援制度の活用・改善方策について

求職者支援制度が、就労困難者が状況に応じて活用できるように、改善する方針を厚生労働省の政策として打ち出し、(独法)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)、ハローワーク、就労支援サービス・相談窓口を担う事業者・自治体が十分連携する仕組みを構築すべきである。

② 重層的支援体制整備事業・生活困窮者自立支援制度について

重層的支援体制整備事業において、実際に既存の制度から漏れる人たちを支援するためには財源的な手当も不可欠であり、その方策を検討すべきである。

エリアを超えて実施することが望ましい施策を、基礎自治体のエリアを超えて利用できるようにするための工夫や配慮について検討を行うべきである。

③ ソーシャルファーム制度について

ソーシャルファーム的な仕組みを様々な企業や事業主が幅広い形態で導入することができるような支援方策について研究すべきである。併せて、労働者協同組合法の 5 年後の制度見直しの機会を捉えて、労働者協同組合をソーシャルファームの受け皿として活用する可能性についても検討を行う余地がある。

④ その他の多様な就労困難者に向けた横断的な支援制度のあり方に関する提言

ダイバーシティな就労支援を推進するためには、国の行政組織においても、福祉政策担当部門と雇用政策担当部門が一体となって取り組む必要がある。行政における各部署間の不十分な連携や縦割りは、自治体外部の社会資源との連携も含め、抜本的な改善が期待される。

態様の異なる就労困難者への横断的支援方策検討部会・ダイバーシティ就労支援ネットワーク構築検討部会2021年度合同報告書

2021年度態様の異なる就労困難者への横断的支援方策検討部会(資料1)

2021年度ダイバーシティ就労支援ネットワーク構築検討部会(資料2-1)

2021年度ダイバーシティ就労支援ネットワーク構築検討部会(資料2-2)

成果④
障害者就労支援機関アンケート調査の実施

① 障害者就労支援機関には、障害以外の就労困難要因を持った多様な就労困難者が、相談や支援を求めに来ており、その中には現行制度では受け入れが難しいものも少なからずいる。

② 現行制度で受け入れ困難な就労困難者に対しても、2/3の法人で受け入れを工夫したり、他の機関につないだりしている。

③ 多様な就労困難者の潜在的な受け入れ意欲は高く、「制度が許せば」を含めると40%の法人が障害の有無にかかわらず多様な就労困難者を受け入れるとしている。

④ 多様な就労困難者を受け入れるための最大の課題は人材・ノウハウの不足であり、支援制度に関する研修や多様な就労困難者の特性を理解できる研修を求めるものが多い。

⑤ 約半数の法人で、多様な就労困難者の就労に向けた個別支援を、連携・協力(チーム)により支えるためのプラットフォームへの関心・参加意向がある。

障害者就労支援機関アンケート調査結果

経済・財政・社会保障収支・労働需給バランス検討部会報告書

成果⑤
海外主要諸国の状況整理

①障害者その他働きづらさを抱える者の就業実態、就業対策と、雇用政策・福祉政策の融合状況

②障害者だけから障害者以外を含む「ダイバーシティ就労化」の動向

③支援付き就労、ソーシャルファーム等の状況

④日本と比較し、日本が学ぶべきこと(日本に対する政策的インプリケーション)等

欧州諸国では、近年大きな政策変化が起きている。

第1に、多様な就労困難を抱える人々を包摂する、ダイバーシティでインクルーシブな社会の実現をめざす取組みが広がり、「障害者」にいわゆる社会的障害者を加える国が増えている。

第2に「シェルタードワークショップ(保護就労施設)」に対する対応である。国連障害者権利条約(2006年12月の国連総会で採択、日本は2014年2月に発効。)の影響もあり、障害の有無にかかわらず共に働くことができる社会を構築することが重要との観点から、シェルタードワークショップは隔離された就労の場だと厳しい見方をする者が増えている一方で、障害者団体等からは、障害の重い者の現実的な就労の場を奪うとの反論も多く出ている。

第3に「シェルタードワークショップ(保護就労施設)」に対する厳しい見方の広がりもあり、障害者その他労働市場で不利な立場にある人々とそれ以外の者が一緒に働く、ソーシャルファームないしその類似形態の就業方式と給付付き税額控除等の所得保障の組合せが西欧諸国で広がっている。

海外状況整理部会報告書

成果⑥
日本財団第3回WORK ! DIVERSITYカンファレンスの開催

2022 年 3 月11 日、「多様な人材を活かすダイバーシティな社会への変革をめざして」を基調テーマに、厚生労働省の後援をいただき、日本財団主催の第3回 WORK! DIVERSITY カンファレンスをオンライン方式で開催した。

「第3回 WORK! DIVERSITYカンファレンス」報告書

田中秀明明治大学教授の講演「少子高齢化と人的投資:ダイバーシティ就労の課題」、パネルディスカッションⅠ(ダイバーシティ就労支援の政策枠組みを考える)、パネルディスカッションⅡ(ダイバーシティ就労を進める地域ネットワークをめざして)など、ダイバーシティな雇用・就労の場(障害者をはじめ、多様な要因で就労困難な状況にある人々が、多様な働き方で、一般の方々とできるだけ一緒に働く場)を広げるために、オピニオンリーダーや現場で就労支援に取り組んでおられる方々に、様々な視点から熱い思いをご披露いただきました。
動画・資料は、「お知らせ」ページをご参照ください。

成果⑦
公開有識者講演会の開催

WORK! DIVERSITYプロジェクト企画委員会では、これまで、各分野の専門家に対する有識者ヒアリングを随時実施してきた。2021年12月以降、公開で開催することにした。多様な就業困難を抱える人々が多数かつ増加しつつある現在の日本の状況を踏まえ、ダイバーシティな雇用・就労(障害者をはじめ、多様な要因で就労困難な状況にある人々が、多様な働き方で、一般の方々とできるだけ一緒に働く)を新たなステージへ移行させるため、オピニオンリーダーや現場で就労支援に取り組んでおられる方々に様々な視点からご発言いただく講演会を今後定期的に開催していく予定である。

◆第1回公開有識者講演会
第1回講演会は、2021年12月3日(金)に開催され、ユニバーサル就労を千葉県で推進している、生活クラブ風の村理事長の池田徹氏と、豊中市や大阪府で就労困難を抱えている多くの方々への就労支援に長く取り組まれている、A′ワーク創造館副館長の西岡正次さんのお二人をお招きし、日本財団WORK ! DIVERSITYプロジェクトへの期待、どのような政策・制度改正が必要か等をお話いただいた。
動画・資料は、「お知らせ」ページをご参照ください。

◆第2回公開有識者講演会
第2回講演会は、樽見英樹前厚生労働事務次官(日本年金機構副理事長)から、厚生労働省が進める地域共生社会づくりとは何か、そして、地域共生社会づくりにあたり、WORK ! DIVERSITYプロジェクトに大きな期待をしていることをお話いただいた。
動画・資料は、「お知らせ」ページをご参照ください。